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華の更年期と介護

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(2)とんでもない目にあっちゃった!

 脳梗塞を起こし、7ヵ月の入院生活を終え、左片麻痺という重い後遺症を抱え、母は在宅介護になりました。専門病院のリハビリもいまひとつ効果がなく、トイレで用も足せません。あたふたするのは、今度は父のほうでした。

 父の様子がおかしくなると、兄嫁はギブアップ。もともと父とは「そり」があわなかったし、頼りの母はもう当てにはなりません。たまたま自宅と店、家が2軒あったので、母はこれまで通り店のほうで兄嫁が、父は自宅のほうで姉と私が、介護を分担しました。

 平常、父の歩行はすり足で亀さんのようです。それなのに混乱をきたすと急に脚力が変わってしまいます。息急き切ってあてのない目的地へと、もくもくと歩み始めます。ときには姿を見失うこともあるほどの健脚ぶり。違う世界にワープしてしまう人の残存能力のすごさに目をみはってしまいます。

 家の中でも異常行動は数知れず。ガスストーブにポットをのせてしまったり、こたつと間違えてふとんをかぶせたり、一時も目が離せません。行政支援(措置)でヘルパーさんを派遣していただき、有償ボランティアのヘルパーさんもお願いし、ご近所の皆さんにも手伝っていただきました。

 私たちが父の混乱のなかでいちばん頭を悩ませたのはお金です。父にとってお金は命と同じ、その執着ぶりといったらもう半端じゃない。札入れにはいつも十数万円入っています。そしてお金を数えるのが父の日課でした。ただし管理はできません。札入れを隠したり、しまい忘れたり、そのたびに大騒ぎになります。ときどき札入れからこっそり抜き取っておくと、今度は「やられちゃったよ」といってまた大騒ぎ。「偽札がほしいわね」と、姉とよくぼやいたものです。

 一日中歩き回り、ヘロヘロで家にたどり着くと、いつも財布は空っぽ。お金をなくすと、「えらい目にあっちゃった、とんでもない目にあっちゃった」と、私たちに訴え続け、交番へ行くと言ってききません。

 来る日も来る日も父の言動に振り回されていた私たちのほうこそ、「とんでもない目にあっちゃった」のです。2歳違いの姉も華の更年期。彼女は、体に胆石や高血圧症を抱え、父まで抱え、憂うつな黄昏時をどんな思いでやり過ごしていたのでしょうか。

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