|
今時のホトケ様は、たいてい水ぶくれで、ふっくらしている。病院で、点滴漬けにされて死ぬからだ。
2年前、同居していた母が92歳で死んだ。自宅での自然死。私が看取った。食べられなくなり、水も飲めなくなり、そのまんま。なにもしない。
ホトケ様になった時の顔は、まるでガイコツのようだった。
でも、痛みも床擦れも一切なく、コトリと死んだ。
あ、そうそう、
「食べられなくなり」と、書いたが、正確ではない。
「食べさせなかった」と、いうのが、正しい。
「えっ、あんた、親を虐待死させたの?」
ちょっ、ちょっと待って。
「それって、許されないんじゃないのっ!」
だから、ちょっと、待って。
これから6回にわたって話していくのは、その事なんだから。
私の職業は鍼灸師。
いろんなことをやった果てに、この仕事に行き着いた。今から10年前、45歳の時だ。
しかし、情けなや、ハリ師のくせにハリが苦手。いつまでたっても上手にならない。あんまり患者さんに迷惑かけるのもなあ・・・
ということで、開業して3年目、高らかに宣言した。
「もう、ハリ止めますから!」
代わりに、食餌療法を看板に掲げた。たいした知識もないくせに、また大胆な、と、思わないでもなかった。でも決めた。
以前から、食餌療法には興味があったし、実践もしていたのだ。
「患者さーん、いませんかあ」・・・いたいた、母がいた。
90歳を過ぎてから、ボケが進み、身体もガタガタになり、施設からも、病院からも見捨てられた、トゲトゲオーラばあちゃん(母のあだ名。超ワガママだから)。
けんかばかりしてだけど、ボケてからは、それもなくなった。すっかり小さくなって。
出番だな、と、私は思った。
「ばあちゃん、うちに帰ろう、うちで死のう」
8ヵ月後、ばあちゃんは死んだ。
いろんな死に方があると思います。
母は干からびて、でも、とても静かに死んでいきました。
私は、その8ヵ月間の事を、話そうと思います。
聞いていただけますか。
|