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世界の高齢者福祉

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第五回 バングラデシュの高齢者事情

デロイ敦子

早稲田大学日本語研究教育センター非常勤講師 
デロイ敦子>


基本データ
 国名:バングラデシュ人民共和国
 首都:ダッカ
 政体:共和制
 面積:14万4千km2
 人口:1億3,810万人(2003年 世銀)
 平均寿命:男性62.6才 女性62.6才(2002年 WHO)
 宗教:イスラム教徒89.7%、ヒンズー教徒9.2%、仏教徒0.7%、キリスト教徒0.3%(2001年国勢調査)
 言語:ベンガル語(国語)、成人識字率:49.6%(2002年、バングラデシュ統計局)
 GDP:36,848億タカ(約578億米ドル)(2005年度暫定値)

Q バングラデシュについて教えてください。
バングラデシュ画像
首都ダッカ

  インド亜大陸の東端に位置する水と緑の国バングラデシュは、大ガンジス川、ブラフマプトラ川のデルタ地帯に広がり、日本の北海道の約2倍に当たる面積の土地に、約1億5000万人という日本より多くの人びとが暮らしています。

 かつては雨季の大洪水が運んでくる肥沃な土壌による豊かな農村地帯として知られ、タゴールの作詞作曲による国歌に歌われたような「黄金のベンガル」であり、またムガール帝国時代はインドの穀倉と称せられたほど、緑豊かな国でした。

 1833年インド亜大陸の国々はイギリスに支配されましたが、激しい独立運動の結果ついに1947年独立を果たしました。

 そのとき、宗教上の問題からヒンドゥー教地域はインド、イスラム教地域はパキスタンとして分離独立することになりました。

 独立の模様は、当時のことを描いたドミニク・ラピエルの有名な小説『今夜、自由を』にも描かれていますが、激しい混乱を招き、多数の難民を出しました。

 パキスタンはインドをはさんで東西に別れてスタートしましたが、東西のパキスタンは地理的にも民族的にも文化的にも大きくかけ離れ、結局、1971年、東パキスタンはバングラデシュとして独立しました。

 その際、多くの犠牲を払って独立を達成しましたが、経済状況は好転せず、世界の最貧国とされて今日に至っています。

 かつては豊かな穀倉地帯だったバングラデシュですが、現在は大きな人口を抱え、貧困にあえいでいます。その様子は、有名な映画監督サタジット・レイの映画「大地の歌3部作」に美しくも悲しく描かれているのでご存じかもしれませんが。

 しかし、経済的に貧しくても、文学、音楽、美術の分野では古くから歴史と伝統に育まれた豊かなバングラデシュの人々は、ベンガルの文化圏(バングラデシュ、インドのベンガル州)として今なお、世界的な詩人であるラビンドラナート・タゴールを生み出したという高い誇りに支えられ生きています。

 
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Q 現在の日本には多くのバングラデシュの人々が暮らしているそうですね。
バングラデシュ画像
大ガンジス川の夕日

 日本は、南アジア地域、なかでもバングラデシュ最大の援助供与国です。南アジアの人々は日本に好意を持っていますが、なぜか日本人はあまり関心を寄せていないようです。

 そんな南アジアの国々に暮らす在留邦人は、現在約4500人いると言われています。反対に日本に暮らす南アジアの人々の数は約33000人。そのなかの3分の1を占めるのがバングラデシュの人々です。

Q バングラデシュの平均寿命は何歳くらいでしょうか
バングラデシュ画像
緑豊かな穀倉地帯

 バングラデシュの平均寿命は62歳(2000年)。60歳以上の高齢者人口は6%に達しています。徐々にではありますが、平均寿命も、高齢者も増えてきています。

 しかし、この国の問題は高齢化というよりもむしろ、乳幼児と妊産婦の死亡率の高さで、それぞれ1000人に54人の乳幼児が亡くなり、そして4.5人の妊婦が亡くなるという高い死亡率が伝えられています。

 絶対的な医療設備、医師不足、また、女性の教育などの男性との格差是正など、母子健康と人口問題解決のためのヘルスプログラム推進に取り組み、バングラデシュ政府はもちろんのこと、日本や各国の援助活動も盛んです。

Q 世界の最貧国といわれるバングラデシュで、お年寄りはどんな存在なのでしょうか?

 在日のバングラデシュ・コミュニテイの中で、最高の知識人と目されているプロトンアロ紙特派員のモンズラル・ハクさんにお年寄りについて伺うと、開口一番「バングラデシュの人々はお年寄りを大切に思い、尊敬しています。お年寄りは家長として敬われ、家族の若い人々を結びつけ、束ねるロープのような存在でもあります」といっています。

 しかし、お年寄りを大切にする、優しく、繊細な心を持った人々の国であっても、その伝統だけで、多くの諸問題を解決できるとは考えられないことも事実です。
 

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Q 一番の急務である経済の貧困から抜け出すためにどうしたらいいと思いますか。
バングラデシュ画像
庶民の足「リキシャ」

 勤勉な国民だからこそ、必死に森林を伐採し耕地を拡大してきました。それにより、環境問題が起こり、慢性的に深刻な大洪水に襲われています。また、イスラム教徒ではない少数民族との間に軋轢を生じています。

 しかし、アジアの小国であるバングラデシュのことは、世界のメデイアにも報道されることはあまりありません。世界各国も次々に起こるほかの世界の大惨劇に目を奪われ、いわゆる援助疲れの様相も見せ、この国のことを忘れがちの傾向にあるようです。

 でも明るいデータもあります。バングラデシュは米の生産量においては、中国、インド、インドネシア、ベトナムについで、世界5位です。また女性の地位は低いといわれていますが、独立後は、現政権を含め、2人の女性首相を輩出し、大物の女性の政治家を輩出しています。

 第二次世界大戦の時に、インド独立を夢見て日本軍と手を結んで戦ったのはチャンドラ・ボース率いるインド国民軍でした。ベンガル地方は、戦争の影響で、大規模な食料飢饉も起きました。日本が知らないところで、大きな影響を与えてきた国なのです。

 ベンガル語もインドのヒンデイー語も日本語と同じ語順で、わかりやすい言語です。そんなバングラデシュに、日本人も関心を持ってほしいと思います。そして、これから高齢化に向かう国に日本の経験を伝えることができたらと思っています。

 今世紀半ばには、世界の高齢者の8割近くが、途上国の人々になります。経済発展後に高齢化を経験している先進国が、これから経済発展をして高齢化を迎える途上国に伝えるべき経験は多いはずだと考えています。



デロイ敦子(でろい あつこ)

デロイ敦子
 1942年2月9日 中国の北京で生まれる。
日本ネパール文化協会(助手)、 Press Trust of India(PTI通信社)東京支局。特派員助手をへて、日本青年海外協力隊(JOCV)ボランテイアとしてインド村落にて社会福祉活動、マレーシアのマラヤ大学で日本語教育に当たる。また、国際協力事業団(JICA)の専門家としてシンガポールの日本シンガポール訓練センターで日本語教育、教師育成に当たる。現在、早稲田大学日本語研究教育センター(2005年4月より本庄早稲田キャンパスの日本語教育を担当)、および、横浜私立大学商学部の非常勤講師として、引き続き、留学生の日本語教育に当たっている。日本外国特派員協会(FCCJ)。国際ジャーナリスト協会(JIJA)所属。

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