● 改正点の概要1
「介護予防」に重きが置かれる
介護保険でサービスを受けるには、まず要介護認定を受け、要支援もしくは要介護1~5の認定をもらうことが必要です。今度の改正案では、この6段階の認定区分のうち、要支援と要介護1の一部が要支援1・要支援2(仮称)に変わります。要支援1・2と要介護1~5という7区分になるわけです。
ポイントは、新たに設けられた要支援1・2ですが、この区分に認定された人には「新予防給付」という、今までとはちょっと違ったサービス給付がなされます。例えば、「訪問介護(家にホームヘルパーを派遣してもらって日常生活上の介護を受ける)サービス」を受けたいと思った場合、要支援1・2と認定された人には従来の「訪問介護サービス」の給付はなされず、代わりに「介護予防訪問介護」というサービスが提供されます。
何が違うのかといえば、今までのサービス内容を、「介護予防」つまり「要介護状態にならないようにする」という視点で見直すことです。訪問介護の中の家事援助(生活援助)を例にあげるなら、「利用者の安全確認をしつつ、一緒に手助けしながら調理をする」、「洗濯物を一緒にたたんだりすることで自立支援をうながす」(厚生労働省の資料より)となります。自分でできることはできる限り自分でしてもらい、ホームヘルパーはその手助けに徹するというわけです。
また、要介護状態にならないようにするため、身体の機能そのものを維持・向上させるという視点も強化されます。ダンベルなどを用いた筋力向上や、転倒防止のために身体のバランスをとるトレーニング、あるいは身体機能の衰えを防ぐ効果があるとされる口腔ケア、高齢者の栄養状態を改善するための指導など、様々なメニューが想定されています。これらの見直しが、訪問介護だけでなく、通所介護(デイサービス)や訪問看護、短期入所(ショートステイ)などにも取り入れられることで、全部で11種類の「介護予防サービス」が揃う予定になっています。
● 改正点の概要2
ケアマネジメントも介護予防の視点で
在宅で介護保険サービスを受ける際には、原則としてケアプラン(どんなサービスをどれくらい使えばいいのかを計画書にしたもの)の作成が必要です。ほとんどの場合、ケアプラン作成は居宅介護支援事業所のケアマネジャーが請け負っています。制度が改正された後も、要介護1~5の認定を受ければ、この仕組みは変わりません。
ところが、要支援1・2と認定された場合、「どのような介護予防サービスをどの程度使えばいいのか」という「介護予防マネジメント」については、市町村、もしくは市町村から委託を受けた「地域包括支援センター」という機関が行う予定になっています。実際に手がける人も、ケアマネジャーではなく主に保健師が担当することになります。(ただし、プランの原案を作成するなど、一部の業務については民間のケアマネジャーに委託されるケースもあるようです)
注目したいのは、単に介護予防のプランを作成してサービスを手配するだけでなく、「本当にそのサービスを使うことで介護予防の効果が達成されたのか」という事後の評価まで行うということです。介護予防という一般の利用者にとっては馴染みの薄いサービスを浸透させるうえでは、目に見える効果を測る作業が大きなカギとなるかも知れません。
ちなみに「地域包括支援センター」というのは、市町村や地域の医療法人・社会福祉法人などが運営する新しい機関で、その役割は要支援・要介護認定を受けた人への事業にとどまりません。介護予防についていえば、介護保険が適用されない人に対しても、その人が要支援・要介護にならないように、転倒予防教室や栄養指導などの「介護予防サービス」が提供されます。こちらの「介護予防サービス」は、市町村ごとに計画される「地域支援事業」に分類されます。これも財源は、主に介護保険料によってまかなわれます。
● ここまでのまとめ
介護サービスを受けるまでの流れ
実際に介護保険サービスを利用するまでの流れをまとめてみましょう。
Aさんという人が「介護保険でサービスを利用したい」と考えたとします。まず必要なのは、市町村窓口に要介護認定の申請をすることです。申請の方法は基本的に変わりませんが、本人や家族が市町村窓口まで行けない場合の「申請を代行してくれる機関」が若干変わります。具体的には、地域包括支援センターが代行申請の窓口に加わったこと、居宅介護支援事業所や介護保険施設による代行申請については、省令によって制限される可能性が出てきたことです。
申請をすると、Aさんのもとに認定調査員が派遣されてきます。今まで認定調査は、居宅介護支援事業所や介護保険施設のケアマネジャーに委託されるケースも多かったのですが、これも規制が厳しくなります。将来的には、認定調査はすべて市町村がじかにかかわることになりそうです。
認定調査が終わると、その結果をもとに市町村で介護認定審査会が開かれます。今までは「その人の要介護度ランクを審査する」だけでしたが、改正案では「その人の身体状況が維持または改善する可能性」も判定されます。つまり、要介護度が軽い人のうち、維持・改善の可能性がある人が「要支援1・2」にピックアップされるわけです。この点を重点的に審査する調査項目も加わる予定です。
仮に、Aさんの身体状況が「維持・改善の可能性あり」と判定されたとします。この場合でも、Aさんが(1)病気やケガをしたばかりで容態がまだ安定しない、(2)重い認知症(痴呆)がある、といったケースでは今まで通り要介護1~5の判定がなされます。現行通り、ケアマネジャーにケアプラン作成をお願いすればいいわけです。
もし、Aさんが要支援1または2と判定されたらどうなるでしょうか。この場合は、市町村もしくは地域包括支援センターの保健師などに「介護予防プラン」を作成してもらうことになります。受けられるサービスは11種類の介護予防サービスに限定されます。(新しい介護保険制度が施行される前に要介護認定を受けている場合は、その有効期間に限って今までのサービスが継続されます)
Aさんが「自立」と判定された場合はどうなるでしょう。この場合、原則的には介護保険によるサービス給付は行われません。ただし、市町村が「このまま何のサービスも受けなければ要支援・要介護になるおそれがある」と判定したら、Aさんは地域支援事業による介護予防サービスを受けることができます。この場合も、そのマネジメントは主に地域包括支援センターが行います。
このように、今回の介護保険制度改正は、介護予防にかなりの力点が置かれることになります。ただし、介護予防サービスの具体的な中身やマネジメントの方法などについては、ほとんど決まっていません。改正案が明らかになる前は、介護予防といえばマシンなどを使った筋力トレーニングなどのイメージが先行していましたが、イメージが固定化するのを恐れた厚生労働省がHPなどでメニューの幅広さを強調し始めました。ところが、それがかえって介護予防の実態を分かりにくくし、現場の混乱を助長しているような気がします。
(2005年4月掲載)
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