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在宅介護・知っておきたい医学の基本



10. 「いつもと違う」と感じたら

小さな変化を見逃さない
高齢者の夫婦

 高齢者の病気は典型的な症状が出なかったり、急変したりするので介護者の注意深い観察が必要です。そのためにはふだんの状態を把握し、小さな変化を見逃さないことが大切です。

 そこで普段の介護の際には体温、脈拍、呼吸、食事の量、排泄の有無、睡眠の状態などのほか顔色や皮膚の色艶、精神状態も異常がないかを注意深く見るようにします。

 観察のポイントは急に太ったり痩せたりしていないか、むくみや発疹の有無、姿勢などの外観のほかに、歩き方の様子や手足に麻痺はないか、歩くときにもつれたり、ふらついたりしないかといった動きに関しても注意が必要です。また、視力、聴覚、嗅覚に異常がないかも確認します。精神状態の観察も必要です。言動に整合性はあるか、表情が沈みがちではないか、言葉がもつれたりしていないかなどもチェックし、観察データをつけておくといざという時、医師の診断の役に立ちます。

高齢者の体調は精神的、社会的要素の影響を受けやすい

 病状悪化や回復の兆しは、身体から発信される様々な情報を正確につかむことから予想できますが、医療の視点だけで身体の変化をとらえようとすると、誤った判断をしてしまうことがあります。それは人が社会的な生き物であり、人の生命活動には生物学的で医学的な要素、心理的・精神的な要素、社会的な要素の三要素が複雑に係わりあって営まれているからに他なりません。

 たとえば「体温が高い」ということは医学的なことですが、原因は病気ではなく暑さなど外気温の上昇によることもあります。また「不機嫌」の原因が、高齢者に多い便秘でおなかがはってというなら、医学的な問題ですが、けんかによるものなら心理的な問題になります。眠れないという睡眠障害の原因も、寝具が変わった、部屋が変わった、介護者が変わったなど、療養者を取り巻く環境の変化かもしれません。

 高齢者の身体的変化の特徴として社会的変化が身体的変化に結びつきやすいという特徴があります。家族の死が認知症の引き金になったり、病院や施設への入所という住環境の変化が人格を変えるという例も少なからずあります。

ホームヘルパーに期待する観察力

 高齢者に適切な医療を提供するには、高齢者のふだんの生活を知らずしては不可能です。高齢者のふだんの体調や生活習慣を知らない医師に適切な診断を求めるのは無理というものです。そこで療養者の身近にいるホームヘルパーからの生活情報が医師にとっても貴重な診療情報となります。

 どんな些細な変化でも、「いつもと違う」と感じたら要注意です。ホームヘルパーの皆さんに期待するのは、小さな変化を見逃さない観察力です。

監修:医療法人喜望会理事長太田秀樹 プロフィール


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